
小森優美さんの目指す未来
「Liv:ra」のデザイナーであり「TSUNAGU」の代表理事を務める小森さんに、ブランドを立ち上げたきっかけや商品にこめる想い、ゴールとして目指す今後のお話について伺いました。
今回は「Liv:ra」のデザイナーであり「TSUNAGU」の代表理事を務める小森さんに、ブランドを立ち上げたきっかけや商品にこめる想い、ゴールとして目指す今後のお話について伺いました。

自分にとっていいもの=地球にやさしい
―あらためて、小森さんがなぜ会社を立ち上げようと思ったのか、ブランドの成り立ちを教えてください。
私はもともと、新卒でファストファッションのデザイナーとして就職して、「大量に仕入れて安く売る」ファストファッション業界にいました。
最初はものすごい量の洋服を廃棄していることにびっくりして……今はファッションの廃棄問題は注目されていると思うのですが、消費者として知る機会がなかっただけで、ずっと当たり前にあったことなんですよね。
2011年に東日本大震災が起きた際に、物がどうやって出来ているのかを知りたいと考えるようになり、何を買うかを意識するようになりました。
自分はオーガニック製品や、商品の背景がよく分かるものを選択していましたが、私自身が収入を得ている仕事は背景が不透明で。
そこから収入を得て自分が良いものを選択していることに納得が出来ないようになって、ファストファッションの仕事をやめて2013年にLiv:raを始めました。
―小森さんが商品にこめる想いをお聞かせください。
大量に仕入れて大量に販売することに疑問があったので、商品を無駄にしたくないという気持ちがありました。そのため、売り残しがないように、消化率はほぼ100%の受注生産をメインに販売しています。
自分にとっていいもの=地球や環境にやさしい、と思っていて……私の作っているものは「シルクを草木染め」とすごくシンプルなものなんですよね。
シルクって本当に気持ち良くて、草木染めも、環境に良くて。
お客様にまず感じていただきたいのは「自分にとっても気持ち良い」のだということ。結果的に、環境も良くなるのだと、知るきっかけになってくれたら嬉しいなと思います。
―2018年にスタートした「TSUNAGU」の商品は本藍染を使用されていますが、本藍染にしようと決めたきっかけはあったのでしょうか?
インド藍の藍染をやったことはあったのですが、本藍染は高額な世界なので、挑戦したことはありませんでした。
徳島に行く夢をみた何日か後に、不思議と四国に行くことが決まり、そこで初めて「藍染」の職人さんを紹介していただきました。
藍染の文化や藍染に関わる人の優しさに感動して、藍染で何か作りたい気持ちから、2,3ヶ月後ローンチ予定だったTSUNAGUで藍染を採用しました。

―プラスチックバッグが有料になるなど、会社を立ち上げられたときと現在では、日本での環境問題意識も変化してきていると思うのですが、商品の在り方で変化したことはありますか?
売り方が変わりましたね。大きく広めることを重点的にやっていたときもあったのですが、今はネットを中心に受注生産の販売をしています。
この形にしてから、最初に自分自身の負担が減りました。いくら社会のために良いものを作っても、自分が持続可能じゃないやり方を選択してしまうと、周りの関係者にも負担がかかり続けられなくなってしまうので……。
負担なく継続出来るようになったことで、結果的に商品の認知も広がり、いい形で循環しています。
自分の内面を観察し、自分で選択する
―小森さんは「自分」を強く持っている方だなと感じました。どのようなところからインスピレーションを受けて、自分のスタイルを維持しているのでしょうか?
エシカルやサスティナブルな活動は外に問題があるように考えてしまうのですが、何か変化を起こすときには「外の状況を知った上で、自分が何を選択するか」が重要だと思っています。
自分の内面と向き合うプロセスを行わないと、自分が何を選択したいのかを決められなかったり、誰かの価値観や常識で選択したりすることになってしまうので。
どれだけ環境問題のことを考えていても、自分自身の選択ではない限り、それは世界を変えるきっかけにはならないんですよね。
情報を取るだけではなく、自分の内面を観察し、声を聞けるようになることが、世界に変化を起こす重要なポイントになると思っています。
そのために私は瞑想したり、旅に出たり、いろいろなやり方で心の内を捉えていくようにしています。
―私たちミレニアム〜Z世代はエコやサスティナブルにすごく敏感な一方で、ファストファッションが主流になり、安さ重視でお洋服や下着を選ぶようになった層でもあります。そんな層に向けて、エシカルなファッションを通して伝えたいことはありますか?
私が感じている問題としては、エシカルな活動で自分を表現したいと思う人が多い一方で、関わる場所が制限されていることです。
エシカルやサスティナブルを追求していく道は、Z世代にとっては苦しかったり大変だったりすることが多いのかなと。
そのため、関わろうと思った際には「自分で創造性を発揮していく」ことが重要なポイント。アクションしつづけることは将来的に形になっていくと思うので、自分を信じて、長期的に創造していってほしいなと思います。

ファッションを楽しむほど、地球が再生される仕組みに
―今後はどのように、ブランドや商品を展開していきたいですか?
Liv:raは個人的なクリエイティブを表現するテーマで活動していますが、Liv:raのようなブランドがたくさん増えて多様性が生まれたら、ファッションの世界が良くなるのではないかなと思っています。
私がLiv:raでもTSUNAGUでもやっていきたいのは、「リジェネラティブファッション」です。
サスティナブルファッションは「負担をできるだけ減らす」という選択が主流ですが、リジェネラティブファッションは「自然に還元出来る素材を使用し、作れば作るほど、地球が再生されていく」仕組みを持っています。
廃棄問題を根本的に解決しようと思ったときに、そもそも問題が起こらないシステムを作ること、自分を取り巻く人たちに問題が起こらないことが重要だと感じて。
シルクは自分たちの体に良くて、環境も改善されていく良い循環になるので、日本のシルクを復活させていきたいですし、どちらの仕組みも数年で完成させたいと考えています。
「ファッションを楽しめば楽しむほど地球環境が改善され、人も幸せになっていくところを、ゴールとして目指しています。」と語る小森さん。植物が土に還っていくように、洋服も土に還っていくような、そんな地球にも人にもやさしい世界がもう目の前まで来ているのかもしれません。